ウタリウムQ&A | 音楽制作と活動の背景

ポップミュージック×図鑑をコンセプトに、未来に残したい“歌う動物図鑑”“聴く動物図鑑”を現在進行形で構築中の音楽プロジェクト「ウタリウム」(Utarium)。本記事では、その発想の原点や制作方法、活動の舞台裏をQ&A形式で言語化し、紐解きます。

Q1. 「ウタリウム」とは、どんなプロジェクトですか?

ウタリウムは、動物の生態やトリビア等をきちんと歌詞に織り込みながら、ポップミュージックとして成立する楽曲を制作・発表していくプロジェクトです。

「1曲=1種の動物」としっかり向き合い、リリースを積み重ねていくことで、シリーズ全体を通して一つの「動物図鑑」を作っていく、充実させていく試みです。これを“歌う動物図鑑”“聴く動物図鑑”と称しています。

Q2. ポップミュージックと「図鑑」を結びつけようと思ったきっかけは?

これまで『日本百鳴鳥』『熱帯魚映像図鑑』『日本の昆虫』等の「映像図鑑」をBlu-rayやDVDで刊行し、YouTubeでは『野鳥動画図鑑 – Wild Bird Japan』という「動画図鑑」を構築・運営してきました。また、鳥やカエル、セミ、コオロギ等の「鳴き声図鑑」も多数制作、リリースしています。

さらに『上野動物園の世界』『葛西臨海水族園の世界』等を撮影・制作、Xでの『動物園&水族館ニュース』の長年の運営、過去には『動物園へ行こう』という電子書籍なども手がけてきました。

一方で、レコード会社・音楽出版社として様々な音楽制作・リリースにも関わってきたため、この2つのフィールドを自分なりに融合させて、何か新しいものを生み出せないかと考えるのは、自然な成り行きでした。

日本語のポップスはこれまでの歴史の中で表現の自由度や裾野が広がり、メロディックラップやトーキングスタイル、スポークンワード的なアプローチも一般化しました。言葉を極端に削らなくても、メロディやリズム、歌唱等で最適解を見つけることができれば、単なる字余りや音楽的破綻とはされず、それがクリエイティブな成果として受け止められる余地が大きくなったと考えています。

だからこそ、その曲のテーマに沿った正確な情報や、長めの言葉を、日本語詞にきちんと乗せる挑戦が、今のポップミュージックの枠組みならば可能だと感じたことも大きな動機です。

Q3. 動物を題材にした音楽の中で、ウタリウムならではの違いは?

子ども向けの動物ソングや、ユーモアを狙ったコミックソングとは一線を画し、1種1種、資料と向き合いながら言葉を選び取り、紡いでいく作詞手法が大きな違いであり、特長の一つです。

聴き終えたときに「その動物がより身近に感じられる」「図鑑や絵本の一節を読んだかような読後感がある」── ポップソングという5分未満の限られた時間でありながら、そんな読書のような体験を提供したいと思い、取り組んでいます。

また、単発の企画ものではなく、継続的な楽曲制作を通じてアーカイブ化・図鑑化していくという、プロジェクトの発想そのものがこれまでにない独自性の高い点だと思っています。

Q4. そのうえで、どんなことを大事にしながら曲を作っていますか?

メロディやリズムを優先するために言葉をなるべく省略していく一般的な作詞と違って、過度には言葉を減らさないよう、配慮しています。端折ることで、意味や文脈が正確に伝わらなかったり、誤解が生じたり、まだ調査や研究の途上にある未確定な事柄が断定的な確定事項として解釈されてしまったり、そういったおそれをできるだけ回避したいと考えているためです。

もちろん、冗長的にはならないよう、言葉の整理も同時に行なっているのですが、一般的には「字余り」と指摘されるような詞になったとしても、そこはメロディやリズム、歌唱法など、作曲やアレンジの側で解決するように努めています。

加えて、学名や専門用語など、通常の曲作りのセオリーでは扱いづらい、長くて難解な言葉も、必要だと思えば積極的に採用しています。聴いただけでは意味が分からなくても、後から「調べてみたくなる」きっかけになればいいなと思っています。

また、これまでの音楽史の中では歌詞として登場したことのないような言葉を、初めて投入するという楽しさもあります。時に、呪文のような難解な言葉を、音楽にどう乗せるのか、その試み自体にも、挑戦の価値があると感じています。

Q5. 1種を曲にしていくとき、発想はどこから始まることが多いですか?

まずは、その動物の基本情報を、詞や詩の形態ではなく、自分なりに通常の文章として書き起こします。

そこから要素を整理し、1番・2番・ブリッジ・サビへと割り振って全体像を設計します。初めてその動物のことに触れる方でも歌詞の世界に入っていけるよう、基本的な話題はきちんと押さえつつ、一方で、少し掘り下げるようなトピックスについては、広げ過ぎて収拾がつかなくならない程度に、範囲を見極めます。

「詞先」か「曲先」かでいえば「詞先」といえますが、作曲段階でも躊躇なく詞を推敲・変更するため、実態は詞曲同時に近い進め方です。

もう1つ、重要な要素として捉えているのが「オノマトペ」です。
鳴き声のような分かりやすい擬音語のみならず、擬態語に近い言葉も含めて、最適なオノマトペがある場合には、積極的に取り入れるよう、工夫しています。
新しい楽曲ほどその傾向は強まっていて、まもなくリリースする新曲『ラッコ 絶滅危惧種の海獣』などは、まさにオノマトペが象徴的な1曲になっています。

Q6. 聴いた人に、どんな体験を持ち帰ってもらえたらうれしいですか?

音楽、それも“歌もの”のポップミュージックと図鑑が融合することで、文字だけでは届きにくい情報が、感覚として身体に入っていく── そんな相乗効果を届けたいです。

気になるフレーズを、思わず口ずさんでもらえるような、記憶に残る曲になればこれ以上ない喜びです。

その結果、見た目の「可愛い」から一歩先へと関心が広がり、生態や特徴、置かれている状況への理解が深まったり、動物園や水族館での見え方が少し変わる、そんなきっかけになったらうれしいですね。

Q7. 「ソングライティング・プロジェクト」と定義しているのはなぜですか?

ウタリウムの本質は、歌詞とメロディを生み出す「ソングライティング」(作詞・作曲)にあると考えているからです。最初のリリースを完成形とは定義せず、むしろ「コンセプト音源」や「ショーケース」のような位置付けとして捉えています。

したがって、今後アーカイブされていく楽曲をもとに、全く異なる視点からのアレンジやコラボなどで、元の楽曲を幾重にも再定義し、アップデートを施していくアプローチも計画しています。

Q8. このプロジェクトを、これからどんなふうに育てていきたいですか?

まずは一人でも多くの方に届く導線を整えられるよう、今あるアイデアを一つひとつ着実に実行していきたいです。そのうえで、楽曲数(収録種)を継続的に増やし、シリーズ全体として“図鑑らしさ”を高めていくことが目標です。

とはいえ、1曲1曲の質は落とさないよう、相当な熱量を持って取り組んでいるため、1つの曲が完成するまでには思いのほか時間を要します。この「時間」と「質」のバランスに向き合いながら、今後も地道に積み重ねていければと思っています。

Q9. このプロジェクトを育てていくうえで、今ハードルになっているのはどんなことですか?

先ほど触れた「制作時間の確保」という問題とは別に、聴いていただく前から、コミックソングや、子ども向けの動物ソングだと誤解されやすい点も課題です。可愛さに留まらない“広さと深さ”を根気強く伝え、幅広いリスナーに届く土壌を育て、その先に、未来へ残るプロジェクトとしての価値を見出したいと考えています。

また、ジャケット画像(カバーアート)用の写真の入手も課題です。ストックフォトで有償ライセンスを取得してデザインするのですが、検索結果について、本当にその動物なのか疑わしいケースが非常に多く、タイトルやタグ付けが間違っていることも多々あるため、動物の特定や妥当性の判断には思いのほか手間と時間を要しています。

動物園や水族館から間違いのないカットをお借りできるようなルートがあれば理想的ですが、今のところはそこまでの仕組みを整える余力がない状態です。

基本的なところでは、実はまだアーティスト写真(プロフィール画像)がないため、どんなビジュアルにするのが良いのか、思案です。……こうして改めて振り返ってみると、乗り越えるべきハードルはまだまだたくさんあります(笑)。


※2026年6月現在、発表済みの動物数は4種(4曲)。次回、もうまもなくリリースとなる「ラッコ」を加えると5種(5曲)になります。


《アーティストプロフィール》

Utarium(ウタリウム)とは|ポップミュージックの文脈に「図鑑」の概念を融合させる前例なき音楽プロジェクト。継続的な楽曲制作によって、未来に残したい“歌う動物図鑑”“聴く動物図鑑”を現在進行形で構築中。動画図鑑、鳴き声図鑑などの分野を先駆的に開拓し、Xで『動物園&水族館ニュース』を長年運営する“中の人”がライフワークとして取り組む試み。聴き終える頃には、その動物の存在がより身近に感じられ、いっそう愛でる気持ちが深まる──そんな新しい音楽体験、知的好奇心を刺激するソングライティング・プロジェクトです。現在までに「ハシビロコウ」「コビトカバ」「スナネコ」「カピバラ」をリリース済み。


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